投稿へのいいねが気になって、スマホを何度も開いてしまう状態は、医学的な診断名ではなく、いいね依存症という通称で呼ばれています。2026年4月にJob総研が就業者397人に行った調査では、64.0%がSNS依存を自覚していました。別の調査では、いいね数などの数字を自分の価値として捉えてしまう人が66.4%にのぼっています。
数字を並べると、自分にも当てはまると感じた方が多いでしょう。やめられない原因は意志の弱さだけではありません。いいねは脳の報酬系を動かし、たまにしか来ない反応が確認行動を強めます。Job総研の調査でも、依存度を下げたくても個人の意思だけでは難しくなっていると分析しています。
この記事では、2026年9月20日時点で確認できる調査データ、脳の仕組み、対策の順に整理します。読み終えたときに、スマホを開く自分の癖と、最初にやめる行動を1つ決められる内容にしました。

SNS依存を自覚する人は64.0%、20代では83.5%に達しました
就業者の6割以上が自分はSNSに依存していると感じています。パーソルキャリアが運営するJob総研が、2026年4月22日から27日に「JobQ Town」登録の20代から50代の男女397人へ行った調査の結果です。SNS依存の自覚がある人は64.0%で、8割以上がSNS利用にリスクを感じていました。
若い世代ほど依存の自覚が強い
年代別に見ると、依存を自覚する人の割合は年代が下がるほど高くなります。20代は8割を超えました。
| 年代 | SNS依存を自覚する人の割合 |
|---|---|
| 20代 | 83.5% |
| 30代 | 71.6% |
| 40代 | 49.5% |
| 50代 | 44.7% |
「危険だとわかっていても使わざるを得ない」という依存の強さも、若年層ほど顕著に表れたそうです。この調査の対象は就業中の社会人で、学生や10代は含まれていません。サンプルも397人なので、日本全体の数字として扱うのは避けたほうが無難です。
やめられない理由は「無意識」と「必要だから」
利用をやめられない理由として挙がったのは、「情報収集に必要」と「無意識に使ってしまう」でした。面白いのは、リスクを感じている人が8割を超える一方で、約8割が自分は適切に使えていると答えている点です。
危ないと知っていて、しかも自分は大丈夫だと思っている。この食い違いが、依存の自覚を遅らせるのだと私は見ています。Job総研は、SNSの利便性の高さが依存度に大きく影響していると分析し、依存度を下げたいと思っても個人の意思だけでコントロールするのは難しくなっていると述べています。INTERNET Watchも、この調査を「6割超がSNS依存を自覚」と報じています。
いいね数を自分の価値と感じる人は66.4%、他人との比較で焦る人は50.1%
いいねへの依存を直接測った調査が、リモラボの「SNSとの付き合い方に関する意識調査」です。女性753人を対象にしたこの調査は、東京新聞とPR TIMESでも取り上げられました。
SNS上の数字を「頻繁に」または「時々」自分の価値として捉えてしまうと答えた人は、合計66.4%でした。数字を「常に」または「ほとんどの場合」マーケティングデータとして客観視できている人は、合計33.6%にとどまります。3人のうち2人が、いいね数やフォロワー数に自分の値打ちを重ねている計算です。
SNSで消耗を感じる場面も聞いています。1位は「過度な情報量の多さに圧倒される」で53.7%、2位は「他者の投稿と比較して劣等感や焦りを感じる」で50.1%でした。半数の人が、他人の投稿と自分を並べて落ち込んだ経験を持っています。
Forbes JAPANは、この調査を「SNSを学ぶ層でも陥る数字の沼」として紹介しました。SNSの仕事や勉強をしている人でさえ、数字に自分の価値を預けてしまうわけです。ただし、調査の対象は女性753人です。男性を含めた全体の傾向とは切り分けて読む必要があります。
TikTokを除く各SNSでいいねは減少傾向にあり、SNSは情報収集の場へ移っています
いいねは、いま少しずつ減っています。THECOOの記事「SNSエンゲージメント低下の正体とは?『いいね』から『シェア』へ、2026年の新運用戦略」では、TikTokを除いた各SNSでいいねが減少傾向にあると報告しました。SNSは、交流の場から情報収集の場へ変わりつつあります。
利用の中身も、クロス・マーケティングが2026年6月23日に公表した「SNSに関する調査(2026年)実態編」で確認できます。普段のSNS利用の上位3つは、投稿された内容の閲覧、動画やライブ配信の視聴、そして、いいねなどのリアクションでした。反応を返す行為は、閲覧や視聴と並ぶ中心的な使い方です。
ICT総研が2026年7月28日に公表した「2026年度SNS利用動向に関する調査」では、日本のSNS利用者が2026年に8割を超える見通しも示されています。SNSは、使うか使わないかを選ぶ段階をすでに過ぎました。全員が使う前提の場所で、いいねの数だけが自分の評価に見えてしまう構図が生まれています。
いいねが付くとドーパミンが放出され、投稿とアプリを開く行動が強まります
投稿にいいねが付くと、脳内では報酬系の神経伝達物質であるドーパミンが放出されます。ドーパミンとは、快感や意欲に関わる物質のことです。ドーパミンが出ると、人も動物も、その直前にやっていた行動をもっとやりたくなります。これを強化学習と呼びます。SNSでは、投稿する行動やアプリを開く行動が、いいねをきっかけに強まっていきます。
薬物、アルコール、ギャンブル、承認など、中毒と呼ばれるものの原因は、いずれも脳のドーパミンの仕組みに求められます。専門家はこう説明しており、この説明がいいねへの依存を考える土台になります。
UCLAの研究では、いいねの多い写真で側坐核が活発になりました
2016年に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームが、fMRIを使った実験を行いました。fMRIとは、脳の活動を画像にして見る装置です。ティーンエイジャーにInstagram風の写真を見せたところ、いいねの数が多い写真を見たときに、報酬系の一部である側坐核が大きく活性化しました。
いいねの多い写真を見るときは、社会認知、報酬、注意(視覚野)に関わる部位も活性化しやすいことも分かっています。他人からの評価が、脳の報酬系に直接届くことを示した研究として、たびたび引用されます。
脳科学者の中野信子さんは、いいねの快感を性行為と比べました
脳科学者の中野信子さんは、幻冬舎plusの連載で「SNSの『いいね!』は性行為より快感だった」と題して、SNSの快感を論じました。東洋経済オンラインにも、SNSの強烈な快感に支配される現代人を扱った記事があります。
他人から認められたい、仲間として受け入れられたいという欲求を、いいねは数字という見える形で、しかも一瞬で満たします。手軽さの点で、これほど効率のよい承認はほかにありません。
ドーパミンが出ること自体は怖がらなくていい
ここで冷静になる材料も置いておきます。日本経済新聞の記事「SNSに中毒性? 脳の『スマホ依存』真偽のほどは…」は、「スマホはドーパミン系を刺激するから危ない」という主張は過大評価だという見方を紹介しています。
ドーパミンは、食事や会話、音楽でも出ます。出ること自体は異常ではありません。問題にすべきなのは、確認の頻度が増えていないか、自分でやめどきを決められているか、生活に支障が出ていないかの3点です。脳科学の言葉に怯える必要はなく、自分の行動を見れば足ります。
たまにしか来ない反応が、確認をやめにくくします
いいねの怖さは、ドーパミンよりも報酬の出方にあります。心理学で間欠強化(部分強化)と呼ぶ仕組みは、毎回ではなく、たまにだけ報酬が得られることで、その行動が強く保たれる現象です。可変的報酬スケジュールとも呼ばれます。
スロットマシンとSNSは同じ構造をしています
STUDY HACKERなどの解説は、スロットマシンやパチンコを間欠強化の典型例に挙げています。毎回勝てるわけではなく、負けるほうが多いのに、たまに勝つという予測できなさが強い依存を生みます。毎回必ず報酬がある場合より、時々しか報酬がない場合のほうが、行動への動機づけは強くなります。
SNSを開く行動も同じ構造です。開くたびにいいねが付いているとは限りません。ところが、たまに大きな反応が来ます。予測できない報酬は確実な報酬よりも強くドーパミンを放出すると解説され、これはギャンブルと同じ報酬構造です。反応を待ち、確認し、また待つ流れが、気づかないうちに習慣になっていきます。Job総研の調査で挙がった「無意識に使ってしまう」という理由は、この流れと重なります。
アプリの設計が、やめどきを見えにくくしています
SNSや動画、ゲームのプラットフォームは、無限スクロール、自動再生、いいねやコメントの通知といった設計で、ドーパミンの分泌を続けさせています。SNS企業のアルゴリズムは、ユーザーをより長く滞在させるために、人間の心理的な弱点を徹底的に学習しているという指摘もあります。ダイヤモンド・オンラインの記事「あなたの手が『絶え間なく』SNSアプリにのびてしまうワケ」も、この点を扱いました。
自分の意志が弱いせいで開いてしまうのではなく、開きたくなるように作られた環境に置かれている。私はそう考えます。責める相手を自分から環境に移すと、対策の立て方が変わります。
承認欲求は悪者ではなく、問題は自分の価値を数字に預けることです
承認欲求そのものは、人が成長する原動力になります。困るのは、自分の価値をいいねの数のような他人から見える数字に預けてしまう場合です。
Nippon.comは、「SNSの時代に『自分』を見失う若者たち」と題したコラムで承認欲求の功罪を論じ、承認欲求を膨らませてスマホ依存に陥る若者が増えている点を問題にしました。数字に価値を預けると、まず、数字が下がったとき自分の価値まで下がったように感じます。次に、他人の評価に合わせて、本来の自分とは違う発信をするようになります。そして、他人との比較から劣等感や焦りが生まれます。
リモラボの調査で、約7割が数字を自分の価値と捉え、約5割が比較で劣等感や焦りを感じていました。この苦しさは、一部の人だけのものではありません。
スマホに依存している人は特にSNSにのめり込みやすく、投稿へのいいねが少なかったり、友人からの返信が遅かったりすると不安になり、頻繁にスマホを見てしまうという説明もあります。思うような反応が得られないと自己肯定感が下がり、他人の華やかな生活と自分を比べて落ち込むこともあります。反応の少なさと比較、この2つが重なったところに、いいね依存症の苦しさが生まれます。
成人のSNS利用に規制が必要と答えた人は66.8%、理由の1位は誹謗中傷でした
Job総研の同じ調査では、成人のSNS利用に規制が必要かも尋ねています。「必要だと思う」と答えた人は66.8%で、INTERNET Watchの見出しにある「7割に迫る」はこの数字です。
規制が必要だと考える理由の上位は、誹謗中傷やネット上の争いを防ぐため(58.1%)、誤情報の拡散を抑えるため(54.0%)、個人情報の漏えいリスクがあるため(42.3%)の順でした。依存そのものより、SNS上のトラブルへの不安のほうが上に来ています。
それでも、依存を自覚する人が6割を超え、規制を求める人も6割を超える点は見逃せません。SNSとの距離を自分だけで調整するのは難しいと感じている人が多い、と私は読みます。
Instagramのいいね非表示は、数を競う空気を落ち着かせる狙いの機能です
いいねの数が見えなければ、数を気にする理由も減ります。Instagramには、投稿のいいね数を他のユーザーに見えなくする機能があります。国内のSNS運用系の解説記事は、投稿するときのプレッシャーが軽くなり、SNS上の過剰な競争や評価から心を守りやすくなるメリットを紹介しています。
Instagramは、ユーザーがいいね数ばかりを見るのではなく、フォローしている相手のコンテンツそのものに注意を向けることを期待している、という見解を示しています。背景には、いいねの数を競い合う不健全な状況を落ち着かせたい狙いがあると説明されています。
ただし、この機能でメンタルヘルスが良くなるかどうかは、今回確認できた範囲では断定できる研究結果がありません。メリットとして紹介されている、という位置づけにとどめておきます。
SNSの利用が心の状態に関わる可能性を示した報告なら、イギリス王立公衆衛生協会(RSPH)が2017年5月19日付で出したレポートがあります。14歳から24歳の約1,500人を対象に、Instagramが睡眠の時間や質に深刻な影響を与え、いじめ、不安、うつ、孤独感といったネガティブな影響も与えているというデータを示しました。9年前のイギリスの若年層のデータなので、いまの日本にそのまま当てはめることはできません。SNSの設計が心の状態に関わるかを考える材料の一つとして、紹介するにとどめます。
国内では、「Instagramにおける『いいね!』が気分及び対人認知に及ぼす影響」という論文がオンラインで公開されています。いいねが、見る側の気分や相手の印象の受け取り方にどう関わるかを扱った研究です。数値までは確認できていないので、この記事では題名の紹介にとどめます。
今日から始める対策は、通知オフと、スマホを開く回数を半分にすることです
対策の中で最初に手をつけるなら、通知をオフにすることです。通知が来たからスマホを開く、という受け身の行動が減り、無意識にスマホへ引き寄せられる回数が下がります。ここから始めるのが手堅いと私は考えます。
対策の全体像は、次の表のとおりです。
| 対策 | 中身 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 通知をオフにする | 通知をきっかけに開く受け身の行動を減らす | 気づくとスマホを触っている |
| 使用時間を少しずつ減らす | 現在の利用時間から段階的に下げる | 急にやめると反動が出る |
| 使用上限のアプリを使う | 残り時間を通知したり、上限でロックしたりする | 意志だけでは止まらない |
| 開く回数を半分にする | 1日200回開く人なら100回減らす | 確認が癖になっている |
使用時間は、極端に減らさず段階的に下げます
スマホの使用時間は、極端に減らすより、現在の利用時間から少しずつ減らす進め方が勧められています。急に大きく減らすと反動が出やすいためです。使用上限を設定できるアプリには、残り時間を通知してくれるものや、上限に達するとロックがかかるものがあり、必要最低限の用途に絞られるため、つい触ってしまう回数を抑えられます。ITmedia Mobileは「“スマホ依存”を脱したい人にオススメのアプリ6選」として、楽しみながら取り組む方法も紹介しました。
開く回数を半分にするだけで、1日100回が減ります
解説記事では、スマホを開く確率を半分にできれば、1日に200回開く依存傾向の人なら100回減らせると計算しています。200回は記事内の一例で、全体の平均値ではありません。
いいね依存症に引きつけるなら、減らす対象は「投稿した直後に反応を確認する回数」です。投稿したら伏せて置く、確認は決めた時間にまとめる。この程度の小さな決めごとで、確認行動の頻度は変わります。通知オフ、使用時間の制限、アプリの活用は、単独よりも組み合わせたほうが続きます。Job総研の調査でも意志だけで下げるのは難しいという結果が出ているので、設定で行動を変えるほうが近道です。
承認欲求の向け先を増やし、月1回・半日のデジタルデトックスから始めます
承認欲求をなくそうとしても、うまくいきません。心理学の解説が勧めているのは、SNSだけで満たそうとせず、自己実現や勉強、仕事など別の方向でも満たせるようにすることです。認められる場を複数持てば、いいねの数だけが自分を測るものさしではなくなります。SNSをやめる話ではありません。
デジタルデトックスは、一定時間スマホやSNSから離れることを指します。休日に月1回、半日から始められると紹介する解説があります。散歩やジョギングなど、代わりにやる活動を先に決めておくのがコツです。何も決めずに離れると手持ち無沙汰になり、結局スマホに手が伸びます。効果の大きさを示す研究データまでは確認できていないので、無理のない範囲で試す程度の位置づけです。
診断名の有無から相談先まで、いいね依存症でよくある疑問
いいね依存症は診断名のある病気ですか
診断名ではありません。いいねの数や反応が気になって仕方がなくなり、スマホを何度も開いて確認してしまう状態を指す、一般的な呼び方です。スマホやSNSへの依存という大きな問題の一部として語られます。銀座泰明クリニックは「スマホ・SNS依存症」として、三陽会クリニックは「SNS依存とは|依存度チェックと今日からできる対策を紹介」として解説を公開しています。自分の状態を確かめたいときの入口になります。
生活に支障が出ているときは、どこに相談できますか
福岡六本松こころのクリニックは、「SNS依存とメンタルヘルス」と題して、うつや不安との関わりを解説しています。鳥取県の依存症支援拠点機関は、ギャンブル、スマホ、ネット、ゲームへの依存問題のハンドブックを公開しました。スマホやネットの使いすぎは、公的な支援の対象としても扱われています。眠れない、仕事や学業に手がつかないといった支障が出ているなら、医療機関や公的な相談先を頼ってください。
若い世代のほうが依存しやすいのですか
Job総研の調査では、依存の自覚が20代で83.5%、50代で44.7%と、若い世代ほど高くなりました。対象は就業中の20代から50代です。学生や10代を含む全体の傾向までは、この調査だけでは判断できません。
まとめ:自覚が6割を超えたいま、最初の1つは通知オフです
いいね依存症は診断名ではなく、いいねへの反応が気になってスマホを何度も開いてしまう状態の通称です。2026年の調査では、64.0%がSNS依存を自覚し、66.4%が数字を自分の価値と感じていました。
背景には、いいねでドーパミンが出る脳の仕組みと、たまにしか反応が来ない間欠強化があります。ドーパミンが出ること自体は異常ではありません。見るべきなのは、確認の頻度と、やめどきを自分で決められているかです。
意志の力だけで下げるのは難しいので、環境から変えます。最初の1つは通知オフです。続けて、スマホを開く回数を半分にし、承認欲求の向け先をSNSの外にも作っていってください。生活に支障が出ているなら、医療機関や公的な相談先に頼るのも、立派な選択です。








